MOROBOSHI Tomorou's Warp Diary 1997 December 3rd Week Another Side

ネタバレ版
ワープ日記・最新版
ワープ日記・97年12月第3週

971216c2[ RING / 『リング』読了 ] ネタバレ版

 つーわけで、『リング』読了。

 ネタバレするので、うっかり来てしまった人は、戻るよろし。

「リング」「ビデオドローム」「ゼノサイド」がネタバレします。































 では、はじめよう。

 やっぱさー「ビデオテープを媒体として、人間に観られることによって伝染する、ビデオウィルス」ちうのは、なんか「おぉ、すげーその手があったかー!」とは思うんだけど、結局、「超能力者の怨念が宿ったテープ」ちうか「超能力者の能力によって、天然痘ウィルスの怨念が宿ったテープ」なわけで、結局その、すごい部分は「怨念」にすぎないあたりが、SF的にみれば、いまふたつかな、と。

 もちろん、ホラーなんだから「SF的にいまひとつ」だからといって、価値は減らないんだろうけど、「観たら一週間後に死んでしまうビデオ」っていう、ありがちだけど刺激的な媒体は、結局「不幸の手紙」以外のなにものでもないわけで。「憤死した超能力者が残した手紙が、不幸の手紙となって、実際に人が死ぬ」だけの話じゃないか、と。

 映画「ビデオドローム」に登場するビデオテープも「観ると死んでしまうテープ」なんだけども、結局「観ると、脳腫瘍ができて、徐々に妄想がひどくなるビデオテープ」ということになっていて「観ると不幸になるのは、ドロームテープの作用によって、不幸な幻覚を観るからだ」という、整合性のある、というか「あーそういうことなのね」という解説があるわけなんだけども、結局、「リング」に出てくるテープの能力の源泉は「すごい超能力者の怨念」ということにつきるので、ちょっと残念かな、と。(「脳腫瘍なら納得するが、怨念だと納得できん」ってのは、ちょっと頭が堅いのか>オレちう気もするが)

 どうせなら、コンピュータウィルス的に「人間に知られることによって活性化する情報ウィルス」みたいなネタにしてくれた方が、まだ、面白いかなぁ、と。

 まー「怨念」を認めるからこその「ホラー」なのだろうけど。

 と、いいつつも、「人間の怨念の込められたビデオテープ」のような「それそのものすばり」みたいな呪物が「ダビング可能」あるいは「ダビングすることで作動する」というのは、面白いかもしれない。不幸の手紙も「増殖」するけども、自分の手で書き写すという部分に「呪文」の本質があるように思えるのに対して「ダビング」のような、本来「偽物」になるはずの行為に本質がある、というのが、面白い。

 超能力者や教祖様が「念」だの「エネルギー」だのを込めた「テープ」とくれば、ふつう「ダビングすると効力がなくなる」となると相場がきまっているところに、「ダビングすること」に積極的意味を認めている点が面白い。

 普通は「物体としてのテープに念がやどるので、ダビングすると念が無くなる」か「情報としての映像や音声に効力があるので、ダビングすることで無限に同じものが増やせる」かどちらかになりそうなものだが「ダビングすること」に意味がある、というのは面白い。

 お札(おふだ)をコピーして、はたして威力があるのか? とかさ。

 呪文、図形に意味があるように感じるのは「1.その図形や呪文を書く・描く行為によって、書いた・描いた人の念がこもるから」「2.その図形や呪文そのものに、何か念を発生させる力があるから」「3.図形や呪文が、どこかにある、術の「本体」を呼ぶから」のどれか、あるいはその複合なんだけど、この「リング」のビデオの呪いは、そのどれからもちょっとずれてて、面白いかな、と。

 ただ、しつこいようだが「科学によって滅ぼされそうになった天然痘ウィルスの怨念」と言われると「ちょっとねぇ」と思ってしまうのだった。


 さて、

 具象画面に写っている謎の「黒い場面」が、一見「サブリミナル」かと思わせておいて「まばたき」だった、というひっくり返しが、けっこう読んでてドキっとした。「誰かが作成した画像」だとばかり思っていた映像が「ある人の主観に入り込む画像」とわかって、主人公・浅川が吐きそうになるのが、よくわかる。

 しかし、25年前に古井戸に落とされた不幸な超能力者の怨念が、その古井戸の真上にあったビデオデッキに、念写として復活した、とか言われると、その凄まじさで逆に「滑稽」な気がしてしまうのだけれども。

 しかし、オマジナイは、骨を帰すこと、と思わせておいて、ぜーんぜん違うというひどいドンデンガエシが、味噌だなぁ。

 よく考えてみれば「見ると死んでしまう、謎のビデオ」ってのは、いわば「不幸のビデオ」ちうか「不幸の手紙・ビデオ版」なわけで、ショッキングな冒頭と「サブリミナルか?」と思わせた展開でうっかりだまされてしまうんだけど「不幸の手紙・ビデオ版」だと気づけば、消された「オマジナイ」が「1週間以内に、この手紙を誰かに出すこと」なのは、言われなくてもすぐわかる。すぐわかるんだけど、オイラは思いつかなかった。思いつかなかった上に、最後の最後で「ウィルスだから増殖」と言われて納得して、よーく考えたら「なんだ、不幸の手紙のお約束じゃん!」と気づくから、ぞーっとする、というか。

 まー、冒頭のオカルトブームの手紙が一千万通っていう「伏線」からして、即、オチバレしてしまった人も多いんじゃないかなと、最後の最後で気づいたオイラはあとから思うのだった。

 オレとしては、全然気づかなかった自分の迂闊さに「ありまちょう」と思うんだけど(^_^;;。

 ただ、しつこいけど、時間切れ寸前に出てきた「天然痘ウィルス」が、実は犯人ってのは、あなた「文庫本の256ページで初登場した海外から戻ってきた叔父が実は2ページ後で犯人だと判明」的に、ずるなんじゃないかー?(^_^;;

 自殺願望がある超能力者は子供が産めない身体で、子供がほしかったんだけど、その肉体に宿った絶滅寸前のウィルスの子供を怨念的に出産、ってのが「う、うーん? うううううん?」ちうか。


「ゼノサイド」で「死のウィルスを絶滅させたいのだが、それは、ウィルスといえども『ゼノサイド』になってしまうのか?」とかいう話を読んだ直後で、で、テレビの「ポケモン」みた子供たちが光過敏てんかんの発作でばたばたと倒れている時に「伝染する死を呼ぶビデオウィルス」みたいなネタ読んでると「なんてシンクロなの!」ちうか。

 あーしかし、こんなにオチをばらしたいのは、きっと、物語に宿った天然痘ウィルスの増殖したまり! っていう怨念なんだろうねぇ。

 とりあえず、本日は、ここまで。


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